解散命令請求の「先」②「普通の人間関係」――NHKクローズアップ現代(2023.10.18放送)

こちらの記事の続きです。

NHK「クローズアップ現代」(2023.10.18放送)に出演された有識者のコメントから、統一教会(世界平和統一家庭連合)問題の今後について考えています。

先回は、教団側の課題として挙げられた「共生の作法」について書きました。

今回は社会側の課題として、江川紹子氏(ジャーナリスト)が挙げた「普通の人間関係」をテーマに考えてみたいと思います。

目次

社会側に求められる課題「普通の人間関係」(江川紹子氏)

長年オウム真理教を取材されてきた立場から、江川氏は信者を差別・排除することに「いいことは1つもない」と警鐘を鳴らします

オウムのときの反省があるからなのですが、やはりオウムの時にあれだけ大きな事件でしたので社会のほうも衝撃が大きくて、オウム関係者を排除するという側に動きました。現役信者は、その自治体が住民票を受け入れない、あるいは元信者も差別されるので、必死に隠さなきゃいけないという中で、せっかく戻ってきたのだけれども、また教団に行ってしまったという人もいました。

ですから、やはり信者を差別したり、排除したりするということは、いいことは1つもないと思うんです。

江川紹子氏コメント 解散命令請求“その先”に何が~旧統一教会と新たな難題~ (nhk.or.jp)

オウム信者と住民の関係性を描き出した映画「A2」

実は、私は統一教会の離脱後間もないころ、オウム真理教について興味を持つようになりました。オウムの問題が、どうしても他人事とは思えなかったのです。1

数々あたった資料の中でも特に大きな影響を受けたのは、当時のオウム真理教を撮影したドキュメンタリー映画「A」「A2」、ノンフィクション小説「A3」(いずれも森達也氏)です。

中でも「A2」には、オウムと社会の対立劇だけでなくオウム信者と住民がとても親しげに交流する場面も収められています。

映画「A2 完全版」※音量注意(冒頭から怒号)

本来は、しっかり敵対すべき(?)間柄。なのになぜか親愛の情が芽生え、彼ら(オウム信者)がそこを去る時、涙を流して別れを惜しむ住民さえも。

そんな不思議な心境に至ったことを、当の住民自身が戸惑っている様子が描き出されています。

教団と信者個人を分けて考える

住民の戸惑いは「目の前にいるオウム信者は、真面目で純真な青年達。どう考えても、教団が起こした凶悪事件のイメージと結びつかない」というものだと思います。

無意識のうちに「教団の活動」と「信者の人格」を、同じものとして見ていたのかも知れません。

結局、社会から排除されれば教団のコミュニティーしか居場所がなくなってしまうということにもなるわけですから、やはり教団の活動については受け入れませんよと。だけど、あなた一個人としては個人として尊重して努めて、普通の人間関係を保っていくということが大事なのではないかなと思います。

江川紹子氏コメント 解散命令請求“その先”に何が~旧統一教会と新たな難題~ (nhk.or.jp)

江川氏が提示されるように、教団活動と目の前の個人(信者・関係者)を別個のものとして分けて考えるスタンスを取れば、たとえ一般社会で異質にみえる人たちとも「普通の人間関係」を築くことだって可能であるはずです。

統一教会信者と「普通の人間関係」を結ぶには

話を現在に戻し、家庭連合(旧統一教会)信者と社会との関係について考えてみます。

今ちょうど話題になっている、こちらの件を例に挙げます。

「おはら祭」踊り連に家庭連合(旧統一教会)が参加(2023.11.3)

否定的な意見もあるのは承知していますが、私個人としては家庭連合が正式名称を名乗って祭りに参加すること自体には、何の問題もないと思っています。むしろ市民に溶け込んで祭りに参加するのは良い事だとさえ。

ただし、この教団には違法性が認められた「正体隠し伝道」を行った過去があり、そこから大きな被害も発生しています。また「天宙復帰」という独特な教義を持ち、信者の獲得にも強い信念をもって臨む方が多いです。いくら団体名を明かしているとはいえ、全く警戒しないわけにもいかないでしょう。

それでも(少なくとも解散命令が確定しない段階において)家庭連合が祭りの踊り連に参加すること自体を拒む理由は、ないものと思います。

ですので「排除はしない・警戒はする」という対応方針になりますが、実際なかなか難しいことです。

社会側に求められる「市民性」

遠回りのようですが、まずは一人ひとりが「知ろうとする」「関心を持とうとする」「考えようとする」姿勢をもつことから始めるしかないのではないでしょうか。

ありがちな「よく分からない」「関わりたくない」という思考は差別・排除を生み、そこから別の「カルト」等が生まれる。30年前に積み残された社会的な課題です。

一人ひとりがよく分からないもの、自分達とは質の違うものに対して、まず一度は関心を持ち、知っておく。行政や権威のある人に丸投げせず、まずは一度自分自身に引き受け、考えてみるという姿勢。

そうした市民性を養うことが、社会側に求められる「普通の人間関係」の第一歩となるように、私は思っています。

おわりに

2回に分けて、NHK「クローズアップ現代」の放送内容から、統一教会問題をめぐる今後の課題について考えてみました。

私は、統一教会の元信者で、この問題の当事者です。教団側「共生の作法」、社会側「普通の人間関係」このどちらも、私自身の今後の課題として横たわっているものです。

特別視せず、受け入れる

番組の終盤、統一教会の元2世信者を「特別視せず」受け入れた一般女性のコメントです。

杉本さん(仮名)
「『実は統一教会の2世です』って言ったときに、顔をしかめられたらどうしようかなと思ったんですけども」


「『あ、そうなんだ』って受け入れてくださったのが、一番心がほっとした感じ」

女性
知ることをしなければ、自分と近くならないじゃないですか。私が経験していない苦しみがすごくあるんだろうなというのは思った

杉本さん
「社会の方たちとやっていこうという気持ちが初めてでてきた。私にとっては本当の意味で新しい人生の出発になるのかなという気がします」

信者である親と離れた “2世”のその後は… 旧統一教会に解散命令請求 なぜ?今後はどうなる? – NHK クローズアップ現代 全記録

江川紹子さんは、こう言います。

教団が言うよりも、一般社会というのはもっといいところだったねと思ってもらった方が、社会にとってもプラスなのではないかなと思います。

江川紹子氏コメント 解散命令請求“その先”に何が~旧統一教会と新たな難題~ (nhk.or.jp)

  1. 統一教会現役信者の方にとって、無差別テロ事件を起こしてしまったオウム真理教と同列に扱われることに強烈な拒否感を覚える方も多いと思います。私は「信者の家族(山上徹也氏)が安倍元首相を殺害するという歴史的重大事件を起こしてしまったこと」「政府が組織性・悪質性・継続性を認めて解散命令を請求した宗教団体であること」の2点において、統一教会をオウム真理教と同列に論じても妥当であるというスタンスを取っています。 ↩︎
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田村 一朗(仮)のアバター 田村 一朗(仮) HN: インセム(인샘)

旧統一教会(世界平和統一家庭連合)
2世元信者 信仰2世(ヤコブ)

この教団に長く身を置いてしまったことを悔いています。統一教会とは何なのか。なぜ信じたのか。この教団は日本社会にどんな影響を与えたのか。問い続けていきたいです。

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