‘25.2.25 日弁連院内集会に寄せたビデオメッセージ

2025年2月25日開催の日弁連院内集会1にビデオメッセージを寄せさせていただきました。私が今、一番伝えたいことを盛り込めたと思っています。このような機会をいただけましたことに心から感謝しています。

■当日の報道記事
特措法の必要性訴え 日弁連、衆院会館で集会 旧統一教会被害者、誹謗中傷相次ぐ 実効的救済を議論―中外日報


目次

はじめに

家庭連合・旧統一教会2世元信者の田村一朗と申します。本日はお話しさせていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。そして、日頃からこの難問に取り組んで下さる日弁連の先生方はじめ支援者の皆様に、心から感謝を申し上げます。

「背教者」として発信する理由

今の私は、旧統一教会の2世元信者として教団を批判する、彼らに「背教者」2と呼ばれる立場の者です。かつては教会で「ヤコブ」と呼ばれた熱心な2世信者で、親と同じ気持ちで「み(むね)3のため、「摂理」とよばれる教団活動に熱心に取り組んできました。

そういうこともあって、私は20代を通じて教会のコミュニティーの中で過ごしましたので、実は良い思い出も沢山ありました。一番大きかったのは、同じ「真の父母様」4を信じる(しっ)(シック)5(く)同士、居心地が良く、今でもあのコミュニティーに対しての愛着がないと言ってしまえば、それは嘘になります。

でも、あの事件を起こした山上徹也さんが私と同年代の統一教会2世だと知った時、私は、彼に撃たれたのはこの自分だったのだと強く思うようになりました。私の「幸せな信仰生活」は、彼をはじめとする多くの人の犠牲や被害の上に成り立っていた。それが彼に撃たれても仕方のない理由――教会の言葉でいえば「讒訴(ざんそ)条件」――になるのだ、と。

もちろん、あんな事件は起こってはいけないことですし、あくまでも比喩的な表現ではありますが「山上さんに撃たれたのは自分だ」という思いを、私は強く持つようになりました。

そのことに気づいてから、私が教会で過ごした期間は、自分の中で完全に「黒歴史」となってしまいました。今は、自分の愛着ある過去に囚われ、被害と犠牲に目を瞑り、教会を擁護することは、私には出来なくなってしまいました。

匿名で発信するのは、親への配慮から

それから、本日もそうですが、私がこうして顔を出さず匿名で発信をするのは、今も熱心な信者である親への配慮があるからです

旧統一教会の教えでは3代圏、7代圏等と言ったように記憶していますが、子々孫々に至るまで統一教会の信仰や「血統」とされるものを引き継ぐことが至上命題とされますので、親は是が非でも子にそれらを引き継いでほしいと願います。それはどんな宗教であっても同じでしょうけれど、おそらく旧統一教会の場合、その思いは群を抜いて強いはずです。そういうことも分かっていますので、親は、自分の子どもがいわゆる「背教者」になってしまったと知ったら、本当に立ち直れないくらいのショックを受けてしまうはずです。

実名・顔出しで発信が出来るに越したことはないのですが、そういう親の気持ちを考えると、どうしても踏み切れません。これは私だけでなく、声を上げた離教2世の方に、そういう思いを抱く方が多いのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

誹謗中傷・二次被害の実態

そして、SNSでは被害の声を上げる方々に誹謗中傷や心無い言葉が浴びせられる現実があります。驚いたことに、教団側の弁護士の先生が率先して信じられない誹謗中傷を続けておられ、それを、現役信者を名乗るアカウントが組織的に拡散しているような現状もみられるので、私は本当に驚いていますし、被害者の気持ちを考えると正直、怒りに震えます。

その弁護士の先生は、被害を訴えた2世信者の、業務上知り得たと思える内容までSNSやブログに書くという、明らかな「アウティング」を行っています。また、声を上げた2世の被害者を名指しで「バカ」等というような、信じられないような書き込みを継続して行っておられますし、被害者が匿名であることを理由に「存在しない」とまでおっしゃいます。これが「天宙復帰」という壮大なゴールを掲げる宗教団体の、「統一食口」「天一国の民」を名乗る信仰者を自称する方々がすることなのでしょうか。また、率先して誹謗中傷を行う弁護士の先生は、一体どういうおつもりなのだろうかと思い、絶望的な気持ちになります。

当事者として求める支援

ですので、喫緊の課題として、これは旧統一教会問題以外の面でも言えるのですが、誹謗中傷への対策は急務だと考えます。ただし、表現の自由は大変重要ですし、言論統制に繋がるようでは絶対にいけないので、バランスは非常に難しいところではあるとは思います。ただ、たとえば韓国では昨年末の務安空港での飛行機事故の後、警察が被害者への誹謗中傷の取締りをかなり早い段階から組織的に行ったという報道6も目にしました。こういった海外の事例も参考に、もう少し踏み込んだ誹謗中傷の対策を求めます。

その他、旧統一教会問題への対策は、日弁連の意見書「三本の矢」に、ほぼ網羅されていると思います。また政府においても昨年1月に開催された被害者等支援の閣僚会議でも、支援の方策が示されていますので、これらの具体的な取り組みを強力に推進するのみです。

付け加えますと、問題の当事者である私たちが特に必要だと感じるのは、対人支援のスキルを持った人材、心理士や社会福祉士等を多く養成し、その方々の待遇を大幅に良くしたうえで、支援に関わっていただくことです。被害者の多くは「相談できるところがなかった」という経験を持っていますので、相談に対応できる人を増やすことは、意外と問題の対策や解決には大きな効果があるのではないだろうか、と考えています。

また、こういう取り組みは旧統一教会問題以外にも十分応用の効く方策であると思いますので、ひいては社会全体に活気をもたらすことにも繋がるのではないかと考えています。7

おわりに

「家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求の地裁判決が令和6年度内に出る公算が大きい」という報道を目にしましたが、その結果がどうであれ、旧統一教会問題への取り組みが求められることに変わりはありません。

継続的に取り組んで下さる日弁連と、弁護士をはじめ支援者の先生方には重ねて感謝を申し上げ、引き続きの取り組みをお願いして、私のお話を終えさせていただきます。ありがとうございました。

  1. 「旧統一教会問題等に関する実効的な被害の救済と予防のための勉強会(院内集会)」 2025年2月25日 主催:日本弁護士連合会 ↩︎
  2. 「背教者とは、宗教や宗教運動の元信者であり、彼らが離れた信仰にとって仇敵となった者たちのことである。」―背教者は信頼できるか?  1. 背教の問題(Massimo Introvigne↩︎
  3. 旧統一教会において「神(≒教祖)の願い」とされること ↩︎
  4. 旧統一教会教祖である文鮮明・韓鶴子夫妻 ↩︎
  5. 食口(シック)―旧統一教会信者 ↩︎
  6. https://x.com/InsaengMwoisseo/status/1882713701603528704 ↩︎
  7. 旧統一教会問題の被害者等支援策に関する提言 ↩︎

noteでは「あとがき」や、応援してくださる方へのページも用意しています。
よろしければ、のぞいてみてください。

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