「宗教2世」がメディアに出演する場合、匿名・顔出しなしの場合がほとんどです。
報道に接する一般の方や、取材・編集に当たるメディア関係者の方の中でも、どうしてなのかと疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
これは「宗教2世」独特の事情によるものです。
だから知ってほしい「宗教2世」問題に掲載された報道関係者「宗教2世」の手記も参考にしながら「宗教2世」が抱える発信・メディア対応のリスクについて、簡単にまとめてみました。
「身バレ」(身元特定)のリスク
私たち「発信する宗教2世」が何よりも恐れるのは、この「身バレ」(身元特定)です。
教団によっては、批判者や反対者に対し、嫌がらせや妨害、もしくは懐柔を行い、その人がメディアに出演するのを諦めさせたり発信を控えさせようとする場合があります。
また、教義に背いたり離教した者に対し、家族も含めた信者が一切の接触を断つよう指導する教団もあります。
メディアに出演せずSNSだけで発信している場合でも、内容から教団に身元を特定されてしまったケースも耳にします。
なかには訴訟を乱発する教団も存在するため、名誉棄損等で訴えられるリスクさえゼロではありません。
本人・家族への社会的影響
これは現役信者・2世に関しても共通していえることですが、宗教に関する話題でメディアに顔出し出演することで、本人や家族・親族などの生活に影響が及ぶ場合があります。
仕事や普段の生活への影響についても細心の注意を払い、「宗教2世」はメディア対応をしています。
親への思い
そして、親への思いや配慮ゆえに、メディアへの顔出し出演が出来ない場合もあります。
多くの親は、自分の信仰を子に継承させたいと願っています。中には子がその信仰を守らない限り親自身の信仰的な目的が達成できないよう教義が設計されている教団も存在します。
自らの子が信仰に背いたり、教団を批判していることを知った親の心理状態(悲しみ・憤り・焦り)に配慮して顔出しをしない場合も、少なからずあると思われます。
それでも「宗教2世」は声を上げる
このように「宗教2世」としてメディアに出演することは、少なからずリスクを伴う行為です。
身バレしたり生活に影響が出たことで、声を上げることをためらったり発信を諦めざるを得なくなった方もあるでしょう。
メディアに顔を出さず出演するのは、「宗教2世」が身元特定等のリスクを回避しつつ、最大限効果的に声を伝えるための戦略といえるのです。
おわりに
安部元首相銃撃事件以降、多くの「宗教2世」がメディアに出演し、またSNS等で発信することで、一部の団体による「宗教被害」の実態が、広く世に知られるようになりました。
一方、報じるメディア側でも「なぜ悪いこともしていないのに顔をぼかさないといけないのか違和感がある」という声も聞かれました。1 「宗教2世」のおかれたこうした状況が、一般的には理解されにくいという事情もあったようです。
宗教2世のメディア出演は今後も続きます。視聴者の方にもメディア関係者の方にも「宗教2世」にこのような事情があることも知っておいていただけると、大変嬉しく思います。