日本の宗教界に考えていただきたい事―統一教会・2世元信者として

思い切って、日本の宗教界について思うところを書いてみました。

2023年11月24日に開催された衆議院法務委員会において、世界平和統一家庭連合(以下「統一教会」)の財産保全を含む被害者救済法案についての質疑応答が行われました。

この時、牧原秀樹議員1による質疑の中で、公益財団法人 日本宗教連盟による声明が紹介されました。

牧原議員の質疑部分から再生されます

(公財)日本宗教連盟2による声明全文は、同連盟の公式ホームページに掲載されています。

目次

統一教会を、他の宗教法人と同列に見て良いのか

11月24日の質疑において牧原議員が引用した部分は、こちら。

信教の自由を含めた精神的自由は、最大限保障される権利であるとされています。そのような精神的自由に何ら配慮することなく、会社法の保全の規定を宗教法人に乱暴に当てはめることはあってはならず、また利害関係人の解散命令請求を受けた利害関係人による保全申立てを認めることは、濫訴による混乱も招きかねないと危惧します。

世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の被害者救済のための法律案について – 公益財団法人 日本宗教連盟 (jaoro.or.jp)

私は法律に関してよく分からないので「会社法の保全の規定を宗教法人に乱暴に当てはめる」ことの是非は判断できません。

しかし「濫訴による混乱」を招かないように配慮しているからこそ、立維案では統一教会の財産保全に特化した「狙い撃ち」法案になっているものと理解しています。

そして宗教界は、この「狙い撃ち」について懸念を示すより、むしろ積極的に支持しても良いほどではないかとさえ私は思っているところです。

この件に関する私(HN:インセム)のツイートを貼っておきます

統一教会は、宗教法人として「別格」

その理由は、統一教会は他の宗教法人とは一線を画す、まさに「別格」の存在であるはずだからです

これは教義・思想などの精神的な部分ではなく、この教団の過去の活動やそれによる影響といった世俗的な面について言っています。

この教団は、宗教が持つ「超越」3の性質、政治との関係性、宗教法人であることの特例を巧みに利用し、長年にわたって収奪を行いながらも巧みに摘発を逃れ続け、今日まで存続してきました。4

不当な献金集めが組織的・長期的に行われ「個人の生活上の不安や脆弱さにつけ込み利用されて、まさに心の平穏や精神的安定が損なわれたということ。」(文化庁職員)5を政府が認めたからこそ、今般の解散命令請求に至りました。

もちろん、宗教法人だって人の集まる団体。私は統一教会以外の宗教団体を経験しておらず知り得ないものの、どんな宗教法人にだってお金や人間関係といったトラブルは存在するはずです。

しかし統一教会は「霊感商法」や「エンドレス献金」とも揶揄される信者に対する実に経済的収奪を行い続け、それによって信者や2世は疲弊し、心身そして「いのち」さえ蝕まれています。これを日本全国で長期的に行い続けてきましたし、私はそれを体験してきた者の一人です。

また、統一教会は宗教団体でありながら大量の銃を輸入し、世界日報襲撃事件などの暴力事件を引き起こしたり、凶悪事件への関与さえ疑われています。6韓国では系列企業に軍事車両を生産する企業7も持っています。8

このような点で、統一教会という宗教法人は、その他の日本国内の宗教法人ではおよそ考えられないほど別次元の宗教団体と言っても過言ではないのではないでしょうか。

不要な不安を感じる必要はないはず

もう1点、11月24日の質疑で牧原議員が強調したのが「基本的人権を保障されている人が不安を感じることが、基本的人権にもとるのではないか」ということです。

ここで同議員が引いたのが(公財)日本宗教連盟声明のこの部分。

今後の法案の議論においては、制度を必要最小限な範囲にとどめ、健全な宗教活動に努めている多くの宗教法人に不要な不安を招かないようご配慮いただきたいと存じます。

世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の被害者救済のための法律案について – 公益財団法人 日本宗教連盟 (jaoro.or.jp)

はい。
政治権力が「不要な不安」を与えることをしてほしくはないというのは、私も全くもって同意です。9

ただ、先に述べたように、今回は統一教会を「狙い撃ち」した法整備です。宗教法人全体の存在価値さえ著しく毀損しかねないほどの団体を、やっと国として取り締まろうというのです

内閣法制局も違憲ではないという見解を示しているし、内心・精神・信教の自由にも十分に配慮された法案であり、被害者救済の実効性との調整はいくらでも可能であると聞き及びます。10

私は、宗教界は歓迎こそすれ「不要な不安」を感じる必要は全くないのではないかと思う者なのですが、これは「宗教弾圧」的な、危険な考え方なのでしょうか。

戦前の「大本事件」とも同一視できない

もっとも、政府による宗教団体の取締りというと、どうしても戦前の大本事件11が想起されます。この歴史の記憶が、宗教関係者の「不要な不安」を招く原因になっている面も、あるのかもしれません。

でも戦前の大本事件は「不敬罪」といった思想的な面での取締り、まさに思想弾圧であったといえます。

対して今回の統一教会への取締りに関しては、この教団が行った世俗的な活動に対するもの。これは大本弾圧とは違うものです。

この比較については「これだけは知っておきたい統一教会問題」第3章で、永岡崇先生(宗教学者)12が以下のように論じておられます。

明治憲法体制のもとでは、天皇を頂点とする国家体制の権威が絶対視され、それを揺るがすおそれのある”反国家的”な宗教活動は取締りの対象となった。これに対して戦後は”反国家的”な思想・教義を対象とする弾圧が否定され、統一教会の”反社会性”による法的措置に関しても慎重な手続きが踏まれている。また統一教会問題では、教団・信者・家族らを国家=社会の敵としてまるごと迫害・排除の対象とした戦前の社会とは異なり、(元)信者や宗教2世の人権を尊重し、その社会生活の支援を進めようとする動きが生まれている。その意味で、かつての宗教弾圧と統一教会問題をめぐる政府の動きを同列に論じることはできない。

永岡崇. 「第3章 近代日本の新宗教弾圧と統一教会問題―《反世俗性》のゆくえ」.島薗進編著. これだけは知っておきたい統一教会問題. 東洋経済新報社. 2023.

宗教界による「不要な不安」の表明は却って不自然

ですので(公財)日本宗教連盟が「不要な不安」を表明するほど憂慮しなくても、あまり問題ないはずではないかと思います。

私は統一教会以外の宗教団体を知らないのですが、あそこまでの収奪を行っている宗教団体は、少なくとも日本宗教連盟に加盟している団体には存在しないものと信じたいところです。

宗教団体の連盟として「不要な不安」を主張するより、むしろ宗教の名を汚した統一教会という教団の行為を政府と共に非難し、その取締りを歓迎し促す姿勢を打ち出した方が自然ではないかと感じているところではあります。

おわりに

自身が統一教会の元2世信者として、1人の人間を「人類のメシヤ」と盲信し、あろうことかこれを「宗教」だと錯覚してしまっていました。

でも、そこから離脱して分かったのは、あれは身も心も「いのち」さえも束縛する、極めて悪質なものでした。解散命令請求を行った文化庁が的確に捉えて下さった通り「奪われたのはお金だけではない」のです。13

事件以来、私が執拗に古巣の統一教会を批判・糾弾しているのは、2世とはいえこの教団の論理を長年にわたり信じてしまった反省によるものです。

「宗教」をかたった悪質な団体の長年にわたる活動により、おびただしい被害が発生し、ついにはその信者家族が安部元首相の命を奪うという最悪の事件を起こしてしまいました。そのような「宗教」を盲信してしまった私自身は勿論のこととして、長年この団体の不正を糺すことができなかったことを、政治や報道のみならず宗教界全体としても反省が必要な局面にあると言わざるを得ません。

だから宗教界には「不要な不安」を訴えるよりも「統一教会のような宗教にかこつけた悪事は今後決して許さない」という毅然とした姿勢を打ち出していただきたい。

統一教会(現・世界平和統一家庭連合そその’友好団体’)と、(公財)日本宗教連盟に加盟する宗教法人は全く別物であると、私は信じたい。

財産保全を巡る次の与野党協議は12月1日とのこと。もうあまり時間はありませんが、至高の公益性が求められる宗教法人の連盟として、その姿勢を再考してほしいと願っています。


  1. 衆議院議員 牧原秀樹・牧原ひでき|プロフィール (hmacky.net) ↩︎
  2. 日本宗教連盟について – 公益財団法人 日本宗教連盟 (jaoro.or.jp)  ↩︎
  3. この世を超える存在や次元についての観念(島薗進. 2023. 『なぜ「救い」を求めるのか』.) ↩︎
  4. 島薗進 編著. 2023. 『政治と宗教 : 統一教会問題と危機に直面する公共空間』. 岩波書店. ↩︎
  5. 「お金を返せばいいというものではない」 旧統一教会、解散命令請求で感じた文化庁職員の本気度(デイリー新潮) – Yahoo!ニュース ↩︎
  6. 樋口毅. 2018. 『記者襲撃』. 岩波書店 ほか ↩︎
  7. 신정개발 – 나무위키 (namu.wiki) 特殊車両に加え装甲車等も製造。2011年12月に世界平和統一家庭連合(韓国)傘下企業となる。公式HP: 신정개발특장차(주) (shinjeong.co.kr)  ↩︎
  8. これは一部の古参幹部やその子息(2世)くらいしか知り得ないことで、教団によって搾取される多くの日本人信者・2世は知らないことです。 ↩︎
  9. ただし、与党である自民党による改憲案や、副総裁はじめ一部の与党議員の先生方の発言に強い不安を感じることが私には多々あるのですが、別件ですのでまたの機会に ↩︎
  10. 財産保全の必要性―23.11.17野党国対ヒアリング報告 | 「いのち」のゆく先 (insaem.jp) ↩︎
  11. 大本事件 – Wikipedia ↩︎
  12. 永岡 崇 (Takashi Nagaoka) – マイポータル – researchmap ↩︎
  13. 脚注5と同一 ↩︎
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田村 一朗(仮)のアバター 田村 一朗(仮) HN: インセム(인샘)

旧統一教会(世界平和統一家庭連合)
2世元信者 信仰2世(ヤコブ)

この教団に長く身を置いてしまったことを悔いています。統一教会とは何なのか。なぜ信じたのか。この教団は日本社会にどんな影響を与えたのか。問い続けていきたいです。

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