本記事は、こちらの要約版です。
旧統一教会教祖・文鮮明氏の発言録を読む
なぜここまで自民党と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の関係が深いのかを知る手がかりとして、創始者である故・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏の発言から探ってみました。
文鮮明氏の発言は全615巻にも及ぶ発言録1として刊行されており、中には日本の政治や自民党について語ったものも数多く残されています。
特に発言録の第110巻に収録された「統一教会の活動と学者たちの使命」というタイトルの講演文に、氏のビジョンもしくは思惑が非常に色濃く表れていると思います。
この発言の要点は、主に次の2点にあると私は見ています。
- 韓国が生き残るためには、日本を後ろ盾としてアメリカに進出するべきである
- アメリカを中心に世界的な反共産主義の版図を築かなければならない
自民党・自衛隊・警察への工作活動
そのようにして日本に影響を与えるために、我々統一教会は自衛隊に対する活動を今から15年前に始めました。自衛隊に対する活動――これは今まで誰も知らなかった秘密です―― 若い人たちを自衛隊に入れることを15年前から始めました。それで、すべての閣僚級から我々を支援できる基盤づくりに注力し、また自民党の高位層と繋がる道を作っておきました。例えば岸首相の時には岸首相を中心として背後工作を緻密にしてきたのです。 こうして自民党の元老級まで、ある程度の線に近づいてきました。 このように自衛隊や自民党の為政者と繋がることをしながら、日本の警察を背後から操ることのできる活動をしてきたのです。
文鮮明先生御言葉選集 110巻 p. 168
統一教会を日本に布教することを通じ、自民党の高位級に繋がって自衛隊・警察までをも背後で操作できる基盤ができたと語っています。
自民党・自衛隊をセミナーで教育
日本の自民党を中心に私が今までやってきたのがそれです。毎週セミナーをしたんです。 経済問題、政治問題、軍事問題、文化問題まですべてセミナーをしたのです。日本の首相の顧問、政治顧問はたった1人か2人なんです。しかし学者は多いんです。 彼らが頭を突き合わせてクラブのようにセミナーをするんです。
文鮮明先生御言葉選集 110巻 p.195
だから、その政治顧問たちが最初は見くびったんです。 「全部統一教会がやって、勝共連合が背後になって…」と言いながら見くびったんですよ。私が鼻で笑いながら「見てろよ。お前らも巻かれるぞ」と言ったんです。それで何度もセミナーをするんですよ。 あと、冊子をどんどん発行するんです。
それによって、今や私たちがセミナーをするその内容が、自民党の必須的な研究資料になりました。そうすると、政治の方向を徐々に変え、日本の国粋主義的な思想体制から脱し、アジアへ、世界へと視野を開いてあげることを今まで行ってきました。また自衛隊もそうだというんです。今までそういうセミナーをずっとやってきているんです。それによって進む道を教示するのです。
政治の方向を変えるという意図をもって、自民党や自衛隊の人士を対象にセミナーを開いたと氏は語ります。
影響を受けた著名人
今回韓国を訪問した福田先生で言えば、その人は昔、共産党でした。左傾化した人が完全に方向転換し、今後の日本が行くべき道を模索した末、この統一教会のすべての事情を知って完全に決心しました。それで、筑波大学を中心として学界を糾合する運動を今しています。
文鮮明先生御言葉選集 110巻 p.191
日本統一教会の会長です。 勝共連合会長のその人を中心に、日本の首相を作るための経済団があり、そこに480人余りが連なっているというんです。岸首相がその後継を譲り渡し、福田首相が全部紹介してくれたりしました。 彼らは将来政界から撤退するだろうが「この基盤は他の誰にも引き継げない。これを引き継ぐ人は久保木しかいない」と言って、久保木を推しているんですよ。実質的な力の勢力圏を見ても、我々は国会に影響を及ぼしうる基盤を築きました。私がもしお金だけ出す日には問題は変わるのです。
文鮮明先生御言葉選集 110巻 p.192
福田赳夫氏(第67代 内閣総理大臣)や福田信之氏(筑波大学 第2代学長)といった指導層の人士が、統一教会の幹部信者を通じて文鮮明氏の思想に感化され、結果として日本の政策は文鮮明氏の思惑通りに誘導し、その影響は防衛政策にまで及んだ可能性さえあると見ても、差し支えないのではないでしょうか。
銃の製造・販売は「共産主義」への対応のため
私はこの共産党のことをよく知っているので、日本の共産党はいつも脅迫・恐喝し、必ず暴力に訴えてくることを知っていたので、日本に銃砲社――猟銃ですね――を38カ所作りました。 毎年、2億円以上の損害を被ってですね……。それはなぜそうしたのか?もし事が起こった時には、彼らが暴力を使う時には我々も黙ってはいられないんです。そして皆さんもご存知のようにエアライフル、鳥を撃つ散弾銃を統一産業で特許製品として作り、日本に約5万丁を輸出してきました。それで全部持っているというんです。これは作戦上必要だということです。共産主義というのは(敵が)弱くなった時に必ず侵攻してくるものですから、私たちはそういう勢力均衡において、力に備える均衡において、彼らに侮られてはいけないということなんです。
文鮮明先生御言葉選集 110巻 p.170
統一教会が銃砲店をもち、日本に猟銃を輸入・販売していた真の目的は「共産主義(者)との戦いに備えるため」にあり「作戦上必要」なのだと文氏が明言しています。
そういった問題(への対応)を準備したので、日本の警視庁では一時これが問題になりました。「あの人たちは何を目論んでいるのか」ということです。それで済州島2に連れて行き訓練させたんです。狩猟大会とか何とか言って、みんな銃を持って日本の数十人、100人近い人たちを大挙移動させて訓練させました。狩猟大会という名目でそれをしたので、日本の共産党や日本の警視庁では「レバレント・ムーンが日本の若者たちに軍事訓練をさせた」などと、ありとあらゆる噂が流れました。だからどれほど深刻ですか?それで警視庁が何度も調査して、1年経って、2年経って、3年、4年経ってみたら我々が絶対に暴力行使をしないことが分かったというんです。それはまあ、過ぎてみれば分かったというんです。共産党が万一攻撃に出たときは行動で開始するというんです。それは日本の警視庁も望んでいることなんです。そのため、日本の警察が保護する中で、我々の勝共活動の基盤を構築してきました。
文鮮明先生御言葉選集 110巻 p.170
以上を整理したものです。
- 銃砲店を日本に作り、空気銃を5万丁輸出した
- 日本人を済州島(韓国)に連れて行って訓練した
- 銃はエアライフル、鳥用の猟銃(⇒武器・兵器ではない)
- 済州島の「訓練」は名目上、狩猟大会
- でも、真の目的は共産主義(者)の暴発に備えるため
- 日本の警視庁は当初警戒したものの、実は統一教会が共産主義(者)の暴発があった時に対抗してくれることを望んでいる
日本の警視庁も統一教会の銃を警戒したものの徐々に解いていった。そこには共産主義(者)の暴発に対応してもらいたいという思惑があったと文氏は語っています。(※あくまで文鮮明氏の発言内容です)
文鮮明氏の問題意識と描いたビジョン
こうした活動の目的について、文氏は「韓国が生き残る道を模索するため」だと明確に語っています。
それとともに考えた問題は何か? 韓国国民がどうやって生き残るか、ということでした。 皆さんご存知のように西と北にはソ連と中共が連なり、東部には日本があって韓国を包囲しています。 こういう実情で生き残るのは容易なことではないのです。 ただ1つ、生き残れる道があるとすれば、それは思想的な面だと考えました。思想的にも宗教的にも武装する道しかないと考えたのです。 経済的な力を持って先進国を凌駕することもできず、あるいは科学的な面でも政治的な面でも文化的な面でもどのような面でも、このような周辺国家を凌駕して世界を中心とした舞台の上に韓国のイメージを変えたといえる道というものがないと見たのです。
文鮮明先生御言葉選集 110巻 p.166
韓国が生きるためには必ず日本を後ろ盾にしなければならないということです。日本だけではだめなんですよ。必ずアメリカを、どうにかして結びつけなければならないということです。
文鮮明先生御言葉選集 110巻 p.168
戦後日本社会の根幹を問い直す
ここに挙げたのは、あくまで文鮮明氏の発言です。しかし戦後日本史と昨今の情勢と照らし合わせてみると、日本の首脳級政治家や学会の重鎮が彼の思想に共鳴し、結果として彼が自衛隊や警察を背後で操れるまで日本社会の中枢に浸透していた可能性も、無下に否定できないかもしれません。
ただしこの発言当時(1980年)と現在は情勢が全く違うので、旧統一教会の影響がどれほど日本の国政や社会情勢に影響を与えているのかは分かりません。
もしかすると特に自民党の政治家にとって、旧統一教会系との関係は「本人が気付かないくらいまでに」当たり前のものとなり、結果、誰一人自覚のないまま政策や国のかじ取りに影響を受け続けている可能性もありえます。
もし文鮮明氏の発言が現実のものとなっている場合、戦後の日本は彼のビジョンもしくは思惑のもとで歴史を築いて来たことになります。その延長上に今の日本社会の衰退があるのだとすれば、自民党と旧統一教会の関係性は、私たちの根幹に関わる極めて重大な問題ではないでしょうか。
その真偽や影響の度合いを測るためにも、米国政府が行ったような国家的な調査が必要だと私は思います。
- 『文鮮明先生御言葉選集』, 文鮮明先生御言葉編纂委員会 編, 成和出版社 ↩︎
- 韓国南西部の島 済州島 – Wikipedia ↩︎