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「TM特別報告」とは何か

韓国における旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への家宅捜索を発端に、「TM特別報告」と呼ばれる教団の内部文書をめぐる報道が日韓で相次いでいます。
本稿では、まず報道で明らかになってきた経緯と内容を整理したうえで、教団側の主張と、その背景にある内部報告の構造について考えてみたいと思います。

目次

経緯の整理

韓国における報道

2025年12月15日、韓国警察が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の関連施設等を家宅捜索し、会計資料・内部資料等を押収しました。1

同月28日、韓国の通信社・聯合ニュースが、いわゆる「TM特別報告」に記された日本関連部分について報じました。2
この報道では、徳野英治・元日本教団会長による報告文書として「自民党議員290人の選挙応援」をはじめ、日本における政治家へのアプローチ、そして現職の総理大臣である高市早苗氏の名前が32回登場すること等が伝えられました。

翌29日、韓国・ハンギョレ新聞によって初めて日本語版の記事が公開されました。3
ハンギョレは前日の聯合ニュースよりも更に詳しく報じ、安倍元首相銃撃事件において「山上徹也被告の会員登録を削除させた」という記載が報告書に含まれていることも明らかにしています(この事実関係について日本教団は「事実無根」と否定しています4)。

この時点における韓国メディアの視点は「旧統一教会による日本での政治との関係のモデルが自国(韓国)の政界にも適用されるところだった」という問題意識にありました。

なおこの他、韓国においては2025年末の時点で既にMBC(テレビ・ラジオ局)や京郷新聞(日刊全国紙)といった複数メディアが「TM特別報告」原文を入手し、報じています。5

日本での報道が本格化

このハンギョレの日本語記事を契機に、日本メディアでも現地報道を引用する形で「TM特別報告」のことが報じられ始めます。以下に、私の方で把握している報道について一覧表にまとめました。
なお、韓国メディアで報じられた「現職首相の高市早苗氏の名前も登場」については各社言及の有無が異なります。

報道日メディア名高市氏への言及
12月30日共同通信6なし
12月30日しんぶん赤旗7あり
12月31日テレビ朝日ニュース8なし
12月31日NHKニュース9なし
1月1日毎日新聞10あり
1月3日日刊ゲンダイ11あり
1月5日産経新聞12あり


NHKニュースは12月31日、「紅白歌合戦」の合間のニュースにおいて報じています。

また1月5日の産経新聞は、報告者として名前が挙がっている徳野英治・元会長に取材した結果として次のようなコメントを掲載しています。

「現在、解散命令請求の裁判が係争中であること、私自身、市長選に集中したく13、コメントは遠慮させていただきます」

「旧統一教会が自民290人応援」韓国報道に「コメントできない」 報告の徳野英治元会長 – 産経ニュース

報告書原本に基づいた報道の開始

そして1月8日(電子版は前日7日に公開)、週刊文春による「TM特別報告」原本に基づいたスクープ報道を機に、日本での注目度は一気に高まりました。14

とりわけ大きな波紋を呼んだのが、元首相補佐官の長島昭久議員に関する「彼は元々マッチング家庭(会員)でしたが、しばらく教会を離れていた時期があり(中略)最近再び我が団体に繋がり始め、我々の応援を受けました」という報告書の記載(2021年11月7日・徳野氏報告)。
このことは他の日本メディアでも報じられ、更に韓国・聯合ニュースも「韓国における旧統一教会捜査が日本の政治家に飛び火」と記事にしました。15

こうして「TM特別報告」は、日本国内においても無視できないトピックとして急浮上することになります。

報道の拡大

以降、日本国内の報道はさらに活性化してきます。

14日より、しんぶん赤旗が「闇のTM文書」として記事の連載を開始しました。16
また、週刊文春のスクープ第2弾17および琉球新報の独自スクープ18など、日本国内における報道は着実に拡大しています。

関係者の釈明と教団発表

週刊文春の記事に自身の件が掲載された長島昭久議員は8日までに「30年以上前に信者であったが現在は一切の関係を断っている。応援を依頼したり受けた事実はない。」等と発表しました。19

これに続き、当初は「コメントを控える」としていた徳野英治氏が、「TM特別報告」に自身の送った報告が含まれていることを認めた上で「誇張があった」「私信に近いもの」等の釈明をTwitter上に発表。20

16日には家庭連合(旧統一教会)日本教団がプレスリリースを発出し、上記の徳野氏釈明も含める形で見解を発表しています(後述)。

教団、および元会長かつ報告作成者の一人である徳野氏がその存在と作成を認めたことで、この「TM特別報告」が、少なくとも教団内部における実在の報告文書であることは否定できないものとなりました。

TM特別報告の内容として報じられていること(サマリー)

これまでに韓国および日本メディアが報じた「TM特別報告」の内容を大まかにまとめました。

あくまで報道内容のサマリーであり、記載内容の真偽や妥当性を判断するものではありません。

日本の政治家に関する記載

  • 日本の国会議員・地方議員の名前
  • 与党(主に自民党)所属議員の動向
  • 教団側が「関係がある」「支援した」と認識している政治家

特定の政治家名が繰り返し登場し、「選挙支援」「応援」といった表現や教団との関係性について記載されていると報じられています。

選挙支援・政治活動に関する記載

  • 教団側が関与したとされる選挙での応援活動
  • 組織的な動員・支援体制の存在をうかがわせる表現

とりわけ「自民党議員約290人を応援した」という趣旨の記載については、韓国・聯合ニュースの報道において初めて伝えられ、日本でも大きな注目を集めました。

また、2018年の沖縄県名護市長選において、選挙支援の具体的な方法や結果、その効果について詳しく記載されていると報じられています21

安倍元首相銃撃事件以降の対応に関連する記載

  • 山上徹也被告の会員登録に関する記載
  • 事件後の教団内部の対応や意思決定の過程

特に文部科学省による質問権への対応について、週刊文春が詳しく報じています。22

教団側の主張と、内部報告の書かれ方

この「TM特別報告」に関し、前述の通り日本教団が見解を発表しました。23

  • 意図的な書き換え・追記が行われた疑いがある
  • 「信仰的配慮」によって数値の上方修正・事実の誇張が一定程度常態化していたという証言がある
  • 世界本部職員および元本部長の尹煐鎬(ユン・ヨンホ)氏による監修・追記が施されたという現場報告がある
  • 内部向けの私的メモに近く、私信に近いものである

ゆえに「極めて信憑性に欠けるもの」と判断しています。

これらの主張は、一見すると「責任逃れ」や「矮小化」と受け取られがちですが、それよりも重要ことはなぜ統一教会の内部報告が、そうした性格を帯びやすいのかという点にあると私は考えています。

統一教会における「報告」は宗教行為でもある

旧統一教会において「報告」とは、単なる業務報告ではありません。
それは、宗教的な意味合いも含む行為でもあります。

教義によると、自身の上位者( アベル)は「神の代身者」と位置づけられます。
その上位者に対して行う報告は、単に事実を伝える行為ではなく「神に喜びを返す行為」「“授受作用”(ギブアンドテイク)を通じて中心者との心情一体化を成すための行為」という側面を併せ持ちます。

このため、「ネガティブな事実をそのまま伝える」よりも、「ポジティブな意味づけを施して報告する」ことが奨励されやすい構造が存在します。

日本と韓国で異なる「報告文化」

さらに重要なのは、同じ教団内でも、国によって報告の感覚が異なるという点です。

日本では、元信者の多田文明さんが指摘しているように24、「神様(の立場にある韓鶴子総裁)に嘘の報告はできない」という感覚が比較的強く共有されています。

一方で、私自身の経験から言えば、韓国の教団文化では「多少盛ってでも前向きな報告をする」「中心者を喜ばせることが優先される」「成果を強調すること自体が信仰的に正しいとされる」といった意識が、より強く働く傾向があります。

これは善悪の問題ではなく、宗教文化・組織文化の違いといえるものです。

ですので「TM特別報告」も実際の出来事をベースにしつつも成果が上方修正され、事実上の現人神である韓鶴子総裁を励ますという宗教的な意味づけがなされ、事実や解釈だけでなく誇張や“信仰的希望がミックスした文書になりやすいものであろうと私は考えます。

結論: だからこそ「第三者による検証」が必要

しかし、だからといって「TM特別報告」が「適当でいい加減な資料」「虚偽の資料」、ひいては「政治家との関係そのものが存在しない」などといった安易な断定をすることはできません。

むしろ、どの部分が事実に基づき、どの部分に“盛り”や解釈が加わっているのかを、外部の視点から検証する必要があるといえます。

なぜなら、仮に一定の事実関係が含まれていた場合、それが一宗教団体の内部事情にとどまらず、日本の国政・選挙、ひいては政策形成にまで影響を及ぼしていた可能性があるからです。

家庭連合(旧統一教会)は、その活動によって長年にわたり多大な被害を生んだとして、東京地裁で解散が妥当と判じられて宗教法人です(※2026年1月現在、東京高裁で審議中)。
そのような団体が、どの程度、どの範囲で政治家や政治過程と接点を持っていたのか。
この点は、教団の自己評価や内部説明に委ねられるべき問題ではありません。

実際、韓国警察は「TM特別報告」を「手掛かり」として捜査に活用していることが報じられています。25

私自身は、日本の信者である徳野氏による報告である以上、少なくとも一定程度は事実に即した内容が含まれている可能性が高いと考えています。ただし、それを最終的に判断するのは、教団内部でも、マスコミだけでもなく、公的で第三者的な検証の場であるべきでしょう。

教団側の主張と、その背後にある内部報告の書かれ方。その両方を視野に入れたうえで、社会的な検証に踏み出すべき段階に来ていると私は考えています。


  1. 경찰, ‘통일교 금품 의혹’ 첫 강제수사…천정궁·전재수 의원실 등 전방위 압수수색 (韓国・亜州経済) ↩︎
  2. 해저터널 추진 간부에게 ‘일본식 정치인 관리법’ 교육 정황 (韓国・聯合ニュース) ↩︎
  3. 【独自】「安倍首相、選挙支援に非常に喜んだ」旧統一教会、内部報告文書で言及 (韓国・ハンギョレ新聞日本語版) ↩︎
  4. 世界平和統一家庭連合(日本) 広報渉外局Twitter投稿(2025年12月30日)  ↩︎
  5. “안희정 되면 괜찮은데 문재인 되면…” 3212쪽 통일교 ‘TM문건’, 스모킹 건 될까 (韓国・京郷新聞)
    “尹 뽑히는 게 하늘의 뜻”‥일본서도 정교유착 (韓国・MBCニュース)等 ↩︎
  6. 「自民290人を応援」 旧統一教会、韓国に報告か (共同通信) ↩︎
  7. 安倍氏、選挙応援を依頼/統一協会内部文書 高市首相も32回登場/韓国紙報道 (しんぶん赤旗) ↩︎
  8. 旧統一教会 衆院選で「自民290人応援」と報告 韓国メディア報道(ANNnewsCH) ↩︎
  9. 旧統一教会 衆院選“自民290人応援”教団に報告 韓国メディア (NHKニュース) ↩︎
  10. <1分で解説>旧統一教会、自民290議員を支援か 韓国報道  (毎日新聞) ↩︎
  11. 統一教会「自民290議員支援」で黒い癒着再燃!ゴマかす高市首相をも直撃する韓国発の“紙爆弾” (日刊ゲンダイ)  ↩︎
  12. 「旧統一教会が自民290人応援」韓国報道に「コメントできない」 報告の徳野英治元会長 (産経新聞) ↩︎
  13. 元会長の徳野英治氏は金沢市長選への立候補を表明しています。 ↩︎
  14. 【独占入手】統一教会マル秘報告書 3200ページがしめす自民党との蜜月「高市早苗氏が総裁になることが天の最大の願い」《長島昭久・前首相補佐官は合同結婚式を挙げていた》《萩生田光一が受け取ったエルメスのネクタイ》 (週刊文春) ↩︎
  15. 韓 통일교 수사, 日정치인에 불똥…”신자였으나 30여년전 탈퇴”  (韓国・聯合ニュース) ↩︎
  16. 闇のTM文書/高市氏の自民党総裁就任 「天の最大の願い」/統一協会 政界工作 (しんぶん赤旗・連載初回) ↩︎
  17. 安倍元首相銃撃の日、“高市最側近”佐藤啓副長官が「統一教会の応援集会」に招かれていた《自民党調査で虚偽回答の疑い》 (週刊文春) ↩︎
  18. 沖縄知事選は「神とサタンの戦い」 18年、旧統一教会文書に記述 (琉球新報) ↩︎
  19. 旧統一教会元信者と認める 自民長島氏 (共同通信) ↩︎
  20. 旧統一教会の「報告」、元会長が書いたと認める 「誇張があった」 [旧統一教会問題] (朝日新聞) ↩︎
  21. 闇のTM文書/名護市長選 18年 統一協会が暗躍/渡具知氏(自公維推薦)当選へ支援/電話・パンフ配布「私たちに依存」 (しんぶん赤旗)および琉球新聞(脚注18.) ↩︎
  22. 「山上徹也の会員記録を削除した」統一教会極秘文書に記された安倍晋三銃撃事件の裏側 教会は約1億円の献金も事件当日に把握していた(週刊文春) ↩︎
  23. 「TM特別報告」(俗称)に対する当法人の見解|ニュース|世界平和統一家庭連合 ↩︎
  24. 韓鶴子総裁へのTM特別報告の衝撃 日本での旧統一教会と政治家との関係が解明されていないことが明らかに (多田文明・Yahoo!エキスパート) ↩︎
  25. 韓国・京郷新聞 2026年1月2日(脚注5. ) ↩︎

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